平成14年111日読売新聞より

ホーキング博士の難病

ALS進行抑制に成功」

 宇宙論で有名な英国のホーキング博士がかかっていることで知られる、運動神経が徐々にマヒして死にいたる難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)の進行を「肝細胞増殖因子(HGF)を使って抑える事に大阪大の船越洋・助教授や中村敏一教授、東北大の糸山泰人教授らの研究チームが動物実験で成功した。

 HGFは中村教授らが発見。肝臓に限らず、細胞死を防ぐ能力が大きいことがわかり、グループは「神経細胞の死滅を防ぐ作用もあるのではないかと考えた。

ALSの原因とされる遺伝子を神経細胞に組み入れたマウスと、神経細胞がHGFを出すよう遺伝子を操作したマウスを交配し、ALSの遺伝子を持ち、HGFを出すマウスを作成。

 ALSの遺伝子だけを持つマウスは、八ヶ月後に神経細胞の数が40%に減り、歩行困難になったが、HGFも出すマウスでは70%が残り、運動能力にはほとんど変化はなかった。寿命もHGFを出すマウスの方が約一ヶ月長く、人間で言うと六年ほど長命だった。

 ALSの患者は日本だけで約五千人、進行を抑える手段は、なるべく体を動かすことぐらいしかない。船越助教授は「運動神経を保ちながら延命する効果が認められた。他の神経難病でも研究を進めたい」と話している。